テレビや新聞で再々取り上げられているので皆さんもよくご存知のことと思いますが、西日本の太平洋側ではかつてない猛暑が続いています。一方、日本海側の各地では、かつて経験したことのないような局地的な集中豪雨によって、河川の氾濫や土砂災害など甚大な被害が相次いで発生しています。
四万十川中流の西土佐地区では、8月に入って連日最高気温が40℃を超え、ついに日本記録を更新し(2013年8月12日、最高気温41.0℃)、一躍有名になりました(右図参照。4日連続40℃超も日本記録)。当地では戸外に一歩出ると、太陽の照り返しで熱風が吹き付けるような感覚に陥ります。
しかし地元では、日本で最も“熱い”町を逆手に取った動きも出ており、早速通常100円の“かき氷”が41円で販売されたり、地元うどん店が考案した“氷うどん”(だし汁をかき氷にして冷やしうどん風にしたもの)もニュースに取り上げられていました。今夏は7月中旬から雨も少なく、四万十川も極端な減水傾向が続いています。少雨と気温の上昇があいまって、川の水温も8月に入って30℃を超え始め、このところ川に入るとまるでお湯のような感覚を覚えます。
昔、アユが夏の盛りに瀬から姿を消して水温が低い淵底などに移動することを「土用隠れ」と呼んでいました。これは高水温に対するアユ自身の適応的な行動なのかもしれませんが、本当の理由はよく分かっていないようです。元々、四万十川は河川勾配が緩いため夏場に水温が上昇しやすい川で、水温が30℃を超えることも珍しくはなく(特に中流域)、高温期には淵底の冷たい水が湧出する場所にたくさんのアユが群れることも実際に観察されています(高橋・東、2006)。ただ、今年ほど水量が少ない状態が長く続くのは記憶にないと地元で川漁を楽しむ方々は仰っています。その一方、シマイサキ、ギンガメアジ、キチヌ、ボラなどの海水魚は淡水域に活発に遡上してたくさん見えていると聞きます(ボラの稚魚は春先にアユに交じってたくさん遡上します)。高水温期に河川下流域で海水魚と淡水魚の双方が見えるのは四万十川の魚類相の特徴でありましょう。
まだしばらくは猛暑が続きそうですが、ひとたび台風等の出水があると、河川水温も低下し、川の環境が更新されます。秋になって、夏を乗り越えたアユがたくさん下流に戻ってくることを楽しみに待ちたいと思います。
【引用文献】高橋勇夫・東健作.2006.ここまでわかったアユの本.築地書館,東京.
四万十市江川崎における7~8月の日最高気温(気象庁ホームページより作成)。昨年(2012年)と比較すると、今年は最高気温が35℃を上まわった日数が明らかに多く、特に7月中旬以降猛暑が続いていることがわかります。
水位が低下して河原が広がった四万十川下流域